マナリからキー・ゴンパへタクシーで向かった。車種は日本のスズキジムニーでタクシー代3500ルピーを4人で分けることにする。カナダから来た23才の女性とチベット人そして私たち二人とチベット人の運転手含めて計5人である。それまで全く会ったことのない人々だ。共通するのは全員キー・ゴンパでおこなわれるカーラチャクラの灌頂を授かりに行くことである。
カザ行きの公共 バスはすでに満員の乗客を乗せてマナリのバスターミナルを早朝5時に出発している。私たちは午前9時にマナリを出発した。
マナリは標高2050メートルにあってマツやヒマラヤ杉の針葉樹が繁っていて緑が多い。しかし高度が上がっていくにしたがって針葉樹が少なくなり、あたりの景色は背丈の低い高山植物に変わっていく。
同じ方向に何台もジープが走っている。 皆キーゴンパで行われるカーラチャクラの灌頂を目指しているのだろうか? 毎年雨が降るこの季節には土砂崩れが頻発して道路が不通になるという。例にたがわず、シムラーからサタレジ河沿いの道路は大規模な土砂崩れが発生して不通になっている。
キーゴンパに向かうには必然的に今走っているこのマナリ経由の道路しかない。それとラダックも道路があちらこちらで崩壊して通れないようだ。タクシーの運転手によると仲間がレーから戻ってこれないと言っていた。チャンゴとナコの間も不通になっているのでチャンゴから先のキナウリ地方へ行くことは諦めなければいけない。インドのガンゴドリー・ゴーレムの氷河も年々後退しているので、ヒマラヤで雨が多くなってきているのも地球温暖化の影響があるのだろう。
食堂や宿屋が何軒か集まった集落マリ(Marrhi)で休憩する。ここは夏の間だけ営業して冬の間は閉めて誰もいなくなるそうである。ここでダラムサラのルンタで会ったアイさんと出会う。スピティー訪問4回のベテランだ。早朝マナリを出発したバスに乗って来たという。やっぱりタクシーは早い。「あれ、たしかマナリでタクシーをチャーターする予定じゃなかったですか?」と聞くと「4000ルピーよりタクシー代がまからないのでやめた」という。とにかく再会を喜ぶ。お茶を飲んでいると日本人に声をかけられる。話をしてみるとマナリの温泉のあるヴァシスト村でロッジを経営している森田さんのグループの方々だった。これからタボを目指し8月12日のキー・ゴンパで開催されるマスク・ダンスを見学する予定とのこと。
お茶を飲んだ後、タクシーはエンジンの唸りをあげ九十九折の道をロタン峠( Rohtang pass )目指して走った。