ダライラマ法王のカーラチャクラ灌頂 2

クンザン峠

 チャンドラ河沿いの道を時速10キロから30キロくらいのスピードで車はひた走る。途中何カ所か雪解け水が道の上を滝のように勢いよく流れ落ちていて、所々道が崩壊している。徐行しながら注意深く通り抜ける。中国の国境が近いからだろうか、何台もの軍用トラックが走っている。追い抜こうにも道が狭くてはかどらない。中国軍はチベットに侵入した後1958年、1959年、1962年とラダックにも侵入している。1965年にはカルギルの近くまで迫っている。インドと中国は戦争をしていたのだった。もしかしたならばラダック、スピティーもチベットと同じ運命をたどったかもしれない。しばらくこの地域は外国人は立入禁止になっていた。
チャトルをすぎてパスポートのチェックをうける。テントの中に入り、ノートにただパスポートの内容を記入するだけだった。

買い求めた地図にはロタン峠を越えるとガランプー、チャトル、チョータダラー、バタルと地名が書いてあるが全く人家が見当たらない。チョータダラーにあるのは二三軒の石積みの壁にビニールシートやテントの簡単な屋根を張っただけの茶店があるだけだ。冬になると、このあたりは人が去って無人地帯になるのだろう。チョータはヒンズー語で狭いという意味だ。なるほど、まわりは石ころだらけの岩山が迫った道が続く。草木も生えない荒涼とした景色を眺めながらバタルをすぎて坂道を登ってゆくと、やがてタルチョがはためくチョルテンが見えてきた。標高4551メートルのクンザン峠だ。さすがに頭が締め付けられるように重い。富士山は3776メートルだからそれよりも遙かに高い。日本では味わえない高さだ。

バス、トラックや軍隊の車も停まっている。どうやら、ここはほとんどすべての車が立ち寄ってコルラ(聖地のまわりを廻って参拝するチベット式巡礼の仕方)をして行くようだ。降りて歩いてみると、すぐにここが普通の場所ではなく、特別な力を持った場所だということに気づく。どこからともなくエネルギーの波が立ち上がってきて、身体を突き動かしてゆく。いつのまにか涙がでて私の体は深い感動で打ち震えていた。20分くらいは続いただろうか。まさしくここは聖なる場所だ。

チャンドラ河沿いの道
崩壊した道
パスポートチェック
バタル側から見上げたkunzum pass
kunzum passのチョルテン


Copyright (C) Ihatov Institute of Integral Body & Mind all rights reserved